2019-08-01

『ヒロシマ 消えたかぞく』絵本


この夏、ようやくできた絵本です。

太平洋戦争中の広島で、荷物疎開していたことで原爆の惨禍を超えて残った、ある家族の写真の数々。ーー当時の広島の様子、家族の温かな暮らし、子どもたちの笑顔、可愛がっていた犬や猫......両親と四人の子どもたちの日常。十数冊のアルバムや、他にも残されたたくさんの写真の数々に向き合い、周辺取材を重ねてまとめたものです。

でも、この家族は、原爆によって一家全滅したのです。

 

本づくりをしている中で私の根底にあったのは、もちろん原爆の恐ろしさ、戦争のむごさを、ページをめくる読者に共に感じ、考えててほしいということではありましたが、それと同じくらい大事に思ったことは、「家族」というテーマでした。

 

この絵本の中の写真を見るだけで、その子、その人なりに感じ、思い、心ゆさぶられることがたくさんあるのではないかと思うのです。私自身そうだったように。

 

絵本の中で紹介した「きみちゃん」は、昭和11年生まれ。生きていれば、今年83歳になります。私の父と同じ年....本づくりをしている時に、そのことにふと気づいて、愕然としました。

生きていれば、その後の人生でどんな人にめぐり合い、家庭を築き、もしかしたらたくさんの子や孫に囲まれて暮らしていたかもしれない....。そういう未来につながる人々をも、原爆は、戦争は奪ってしまったのです。そんな人が、家族が、どれだけあったことか。

 

作り手の思いもありますが、それはそれとして、この絵本を手にとってくださったお子さんたち、大人の方々、それぞれの身に沿わせてページを開いていただければ本望です。

写真提供/鈴木恒昭さん