2018-09-01

9.1 防災の日・てんでんこ


各地の大雨被害が気になるこのごろです。

「被災地」という言葉から、みなさんが思い浮かべる地域はどこでしょうか。

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私は東日本大震災で東北に関わるようになり、現地の様子を絵本の形で描きとめてきました。

この七年を通して、今率直に思うのは、〈自分が住んでいる地域もふくめ、いつどこでも災害に見舞われる可能性はある。隣り合わせなんだ〉ということ。これまで割とのほほんと生きてきたわたしには、日々適度な緊張感・意識を持って暮らすことの大事さを学んだ、貴重な日々でした。

でも中には、「心配ばかりしていたら何もできない、子どもも外に出せない」と考える人もいるかもしれません。でも少し視点を変えてみると....「生きていると本当にいろんなことに遭遇する。だから楽しかったり興味のあることはもっと深められるよう、また危険や不安をおぼえた時にはどう回避したり越えていけばいいか想像して、色々くふうする知恵や力をつけておこう」と考えれば、内向き一方向に陥らず、開かれた世界にチャレンジ・飛び込んでいくのびのびした力強いものになると思うのです。

残念ながら、私たちはこの世で起こるすべての物事を体験することはできません。でも、それを知る「知恵や方法」はある。本や文献や新聞、ネットで過去の歴史を調べたり、この数十年くらいのことなら映像で見ることもできる。近くに体験した人がいれば直接話を聞くこともできる。もしかしたら小説や映画に、そのヒントがあるかもしれない。そこで何を感じたかをしっかり胸に留めて、自分で考える。ぼくだったら、わたしだったらどうするか、どうしたらいいか...そして、ちょっと試してみる。

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この絵本で描いた子どもたちから、気づかされたことーー

「おや?」と思った気持ちを素直に受け止めること、確認し自分で考えて行動すること、工夫すること、励ますことは励まされることでもあること、どんなことがあっても生き抜くこと。そう行動できるには、やはり心構え(準備や訓練)が大事なことなど。そしてその傍らには、子どもたちと共に学びながらいのちを守ることに正面から向き合ってきた、学校の先生方や多くの大人の存在があったこと。

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残念ながら、自然災害からの様々な被害を0(全く無し)にすることは無理で、いつの時代になっても「被災地」という言葉は無くならないと思います。でも、その規模や人命被害をできるだけ少なくする工夫や方法は絶対にあるはずだと信じています。

この絵本が、お子さんといっしょにそんなあれこれを考えて会話を交わす一助になれば幸いです。それからもう一つ、絵本の初めと最終ページに自然豊かな海の絵を配しているのは、私たちがこの自然、地球で生き、生かされている存在であることを、心にしみこむように感じてほしい......との思いから。伊藤秀男先生の迫力ある絵も、ぜひじっくりみてください。

長くなってしまいました、反省。