雨、散歩、本
タイトルにひかれて、手に取った一冊、『春を恨んだりしない 震災をめぐって考えたこと』池澤夏樹著(中央公論社)。
震災後、池澤さんが感じたこと、考えたこと、東北に行ったときのこと、原発のこと、いろいろが書かれてある。読んでいて、すこし重い気持ちになったり、ハッとするようなひとことに出会ってドキンとしたり、この2年で出会った東北のたくさんの友や海やがれきの町を思い出して、読み終わったときは大きなため息をついた。
この本には、モノクロの写真もたくさん入っている。東北沿岸部の被災後の風景…というか、空気が写っていたが、これが池澤さんのことばと合って、とてもよかった。
郵便局まで用があって、ふだんだったら車で行ってしまうところを、今日は雨の中、ブラブラと歩いて行った。本の余韻を味わいたかったからかもしれない。
ちょっと歩けば、ほんとうにいろんなものが見えてくる。水たまり、緑、花びら、土のにおい、春。
感じるってことは、生きているってこと。自分も、地球も。
「たまたま生き残っ我々」、その責務、「東北の人々と共に踊る日のためにできることのすべてをした上で、その日を待ちながら、一人ででも踊る」池澤さんのことばが、腹の底に響く。