2021-01-21

よみがえるヒロシマーー六郎さん写真のこと


『ヒロシマ 消えたかぞく』絵本でも紹介した鈴木六郎さんの撮った古い写真を、広島出身の大学生がAI でカラー化する取り組みを紹介したニュースです(NHK web記事:昨年放送)。原爆で失われたヒロシマの古い町並みを、VRで再現する高校生の取り組みも。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201113/k10012706581000.html

 

『ヒロシマ 消えたかぞく』は、原爆で家族もろとも命を落とした鈴木六郎さんの遺した写真を文章とともに編み、日々の暮らしのかけがえのなさ、原爆や戦争がもたらした事実を多くの人・子どもたちといっしょに考えたいと思って作った一冊です。

もとは、六郎さんのモノクロ写真の素晴らしさに心を打たれたのがきっかけでした。わたしにとってモノクロ写真は、時間を封じ込める(その一瞬を、まさに記憶・歴史に焼きつけるような)印象・作用があり、色に惑わされずに伝えたいことや被写体がグッと前に出てくる....という感覚があります。

でも、それがもしカラーになったら。

はじめは、ちょっと違和感があるのでは? と頭で考えていました。でもよく考えてみれば、一般的に私たちは物を見る時、カラーで見て(感じて)いる。むしろ、カラーで見ているものをモノクロに焼き付けるほうが意図的なことなのか... 

ならば、モノクロ写真をカラーにするということも「ありなのか」と、妙に納得したのでした。

カラー化された写真は、公子ちゃんや英昭くんが今そこでスヤスヤ眠り、息遣いまで聞こえてきそうな臨場感があります。時代・時間を超えた距離がグッと縮まって、全く違う一枚の写真になる。

カラーもモノクロも、どちらもそれぞれ意味がある...  VRでの再現も。被爆体験(証言)の継承に加え、こうして様々な形で、様々な人間が当時を知ろうとする試み・発信していくことが「原爆の記憶を次へ引き継ぐ」大事な作業なんだと、しみじみ感じています。