うれしい便り 岩手のKちゃんから
先日、とってもうれしい連絡がありました。
岩手・釜石市出身のKちゃんからです。今、岩手県内で看護師をしているKちゃんの、Happy wedding dayの報告でした。
Kちゃんとは2011年(東日本大震災発災後)の7月、釜石東中学校で出会いました。(当時、この学校の校舎は津波にのまれて使えなくなってしまったため、生徒達は市内の別な学校に間借りする形で過ごしていた)
震災後、わたしは、大津波から逃げ切った子ども達のことを何としても記録に残したいと釜石に通い続け、Kちゃん達が通っていた小中学校(釜石東中学校と鵜住居小学校)の子ども達と息の長い交流をしていました。
中でも中学2年生だったKちゃんは、発災直後のこんなエピソードをわたしに語ってくれた子です。
「大地震の後、こわくてこわくて泣きそうだったんだけど、高台へ向かって走って逃げるときに、小学生の子がギュッとわたしの手を握ってきたんですね。
その時(わたしが泣いたら、この子がもっと不安にさせちゃう。しっかりしなくちゃ)
と思ってギュッと握り返して、「だいじょうぶだよ、だいじょうぶ」と声をかけながら逃げたんです...」
その後、わたしは小学生の子ども達にも、大地震直後の避難状況を聞き取りしています。小4のある子は、こんなふうに答えてくれました。
「こわくてこわくて、足がガクガクして歩けなかった。そしたら中学生のお姉ちゃんが手をギュってにぎってくれて、【だいじょうぶだから、ね!】って言ってくれたんだ。それですごくホッとして、いっしょに走ってにげられたんだ。お姉ちゃんの手、あったかかった...」
この小学生が手をつないだのが、Kちゃんだったかどうかはわかりません。あとで小学生達に「震災の時に、誰と手をつないで逃げたか覚えてる?」と質問したことがあったのですが、覚えている子はほとんどいませんでした。発災直後、それくらい緊張、錯綜していたことが想像できます。
でも、そうやってみんなが高台へ向かって逃げたのです。
中学生は小学生に手を握られたことで、しっかりしなくちゃとハッとし、かたや小学生は中学生に手を握ってもらったことで、心底ホッとした。身を寄せ合うことで、互いが互いに励まされ、勇気づけられ、助けられていたのです。
このことは、絵本『はしれ、上へ! つなみてんでんこ』の中で、「緊急時の積極的な避難・自分で考えて行動する」ことの大事さと同様、わたしが最も伝えたかったメッセージの一つです。
それを、わたしに本人の言葉で伝えてくれたのがKちゃんでした。
Kちゃんが岩手から上京して関東の看護学校へ通い始めて間もないころ、まだ生活に慣れなかったのか、「指田さん、いっしょにお昼ご飯食べてもらえます?」と電話をくれたことがありました。
一も二もなく、「よっしゃ!」とJR大宮駅で久々に会い、ご飯を食べたのも、もう5年以上前...。
わたしにとっては、こんなふうに取材や旅で出会った人たちが、この上ない宝物です。
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Kちゃん、立派な看護師さんになったね。ご結婚おめでとう!
二人で支え合い、楽しく豊かな人生を歩んでね。