むっちゃんのキヌガサタケ!
これは先月のことですが。
釜石の栗林地区内にある仮設住宅を訪ねるため、
車で川沿いの道を走っていると……
白い棒のような妙な物を持って歩いている
おばちゃんを追い越しました。
探究心旺盛のわたしとしては、知らないこと、
理解しがたいものは、「この目で見て、納得すっぺし」。
すぐに車を止めて、
「おばちゃーん、それなあにー?」と。
* * *
その人は、話をしたら、何たら知り合いの知り合いで、
むっちゃん、というおばちゃんでした。
「おめ(お前)、これ知らねえのか?」
「初めて見だー、なんだべ、これ?」
「これはな、キヌガサタケっていうキノコで高級なんだぞ〜」
「へーーーーーっ、(それにしてもすごい形!)」
あとで調べたら、スッポンタケ科のキノコとのこと。
傘の下にレース状の網がドレスみたいにかかるところから、
「キノコの女王」とも呼ばれている一品とか。
うむ……でも、食べるの、ちょっとこわいなあ……。
なんでも、むっちゃん曰く
「松茸よりうめんだ〜」。また、
「朝見だどきはよ、卵みてえな袋の上の方が割けててよ、
夕方見に行ったら、そこから育ったのが、
こったら大ぎくなってたんだ」
えーーーっ、半日で30cmも成長???!!!
やっぱり菌類は、我々の想像を超える
ふしぎちゃんですなあ。
* * *
探究心いっぱいの私としては、毒キノコでないとわかれば、
(どんなお味だべ、一口くらい味見を……)と
ノドまで出かかりましたが、むっちゃんの連発する
「高級なんだー、めずらしいんだぞー」
の力強いことばに、それ以上何も言えず…。
後ろ髪引かれる思いで、
「せめて写真だけは……」とパシャッ。
…そのかわり、むっちゃんからは「サルナシ(コカ)」を
いただきました。長年気になりつつ、まだ食べたことがなかった
念願のサルナシ。ねっとり甘いけれどさわやか。
野趣あふれ、なかなかの美味でした。
シャーベットにしても合いそう!
(キノコより安心して食べられました)
凍天!(しみてん)
先日、釜石に来る途中、
東北自動車道の国見SA(下り)でみつけた
凍天!(しみてん)
あの、ケンミンショーでも
紹介していた凍天!
こういうのにはあまり反応しないわたしですが、
こればかりは「どんな味かためしてみたいなあ」
とひそかに思っていた矢先、
思わぬところで遭遇。
甘さ控えめのドーナツ生地の中に、
あんこではなく、腰のあるよもぎ?餅が鎮座。
なんとも素朴で、どこか懐かしい味でした。
わたしは大好きです。
それにしても、なんともまあ、間抜け顔。
おはずかしや…。
大槌湾、月の道現る
あっという間に10月半ば。
今週はじめから釜石に来ています。
朝晩、寒っ! (ちなみに、今朝6時は5℃)
先日の台風の荒波もすごかったです。
こちらは大きな被害がなかったですが、
伊豆大島のニュースには目を覆いました。
テレビのニュースを見ていた知り合いは、
「津波と同じだ(津波みたいだ)……」と。
とても他人事には思えなかったのだと思います。
被害にあわれた多くの方々に、心よりお見舞い申し上げます。
・・・・・・・・
今日、こちらはすっかり晴れて、波も静かで、
ほんとうにスッキリしたいい日でした。
夕景もこの通り。
満月で明るく、月の道が現れました。
きっと、空気も澄んでいるから余計にきれいに
見えるのだと思います。
サンマも脂がのって、うんめー時期。
みなさん、ぜひ東北&東北沿岸部においでんせ!
ジャングル・ハウス
この春から、釜石へ行ったきりで、
ほとんど家にいることがありませんでした。
この夏、埼玉の熊谷近くの猛暑からは逃げ切って、
かなり涼しく過ごせたものの、久しぶりに帰れば、
庭はワイルド・ガーデンを越えて、雑草ジャングルに。
畑なんて、もっとたいへん。
ハテ、どうしたものかと頭を悩ませるこの数日です。
……と言っているうちに、またあちこち出かけなければ
ならず、結局手がつけられないまま、
晩秋になってしまいそうな。
そういえば、去年は、久しぶりに家に帰ったら、
かわいいコウモリが天井で留守番をしてくれていたっけ。
今年は……?
そう、釜石では、もうナナカマドが色づきはじめていました。
朝晩もかなり涼しくて、長袖シャツを羽織るくらい。
すごしやすいけれど、被災跡地に吹く秋風は
ふっとというか、スッとというか、
時折、身に差し込むように感じるときがあります。
人恋しくなります。
これから寒くなる季節を乗り越えるためにも、
どうぞ多くの方々のお出でを、お待ちしております。
海の幸も、これからが脂がのって、おいしいですよー。
還らないもの
お天気も落ち着いていたので、
しばらく出かける前にと、終日畑へ。
ミニトラクターで畑を耕すと、思ってもないところで出てくる、ビニールやプラスチックの破片。便利と思って使ったビニールシートやプラスチック札、その他のものが、劣化してパリパリ・ビリビリになって……茶色いフカフカの土の中で、ものすごい違和感を感じる。
切り藁、麻ひも、木札、そういうものはいずれ自然にかえるけれど、ビニールやプラスチックはそうはいかない。いつまでも、いつまでも残る。あまりに劣化すると粉々になって土に混じり、一瞬見えなくなる……気がする。でも、微生物に分解されて、土と同化することはしない。見えないだけで、残る(ここまでくると、もう拾えない)。
廉価で便利。だから「もう絶対使わない」とは言わないけれど、買う前にちょっとだけ考えなくちゃ…。
安易なものは、安易にゴミになる気がする。超消費型社会? 循環型社会? えらぶのは自分。
暑さにも寒さにも…
負けず……と言いたいところだけれど、
寒さには弱く、ストーブを焚いてPCに向かって原稿を……と思いつつ、瞼が重くなってコックリコックリ……。
先週から鳴き声が聴こえるようになった庭の虫も、ミニ池に入り込んだと思われるトノサマガエルの声も、この数日はさっぱり。この寒さ、虫だってカエルだって活性が下がるよなあ。わたしもいっしょ…。(低血圧で平熱も少し低いので、寒さにはめっぽう弱いのです)
テレビのニュースで、たしか仙台?、蕾が開いた桜に雪が降り積もっている映像を観てびっくり。25日からは再び岩手・釜石へ行く予定なので、何を着ていくか、持って行くか、少し悩みます。
さすがに今後はそこまで寒くなる日はないだろうけれど……いや、でも震災の年は、5月連休明けでも底冷えする日があって、朝、息が白くなった日があったっけ…。
絵本でずっと取材をさせてもらっていた、釜石東中の今年の卒業生(今高校1年生)たち、どうしているかな? 朝、ちゃんと起きて、高校へ通っているかな? この寒さの中、自転車を飛ばして通っているのかな。それとも、バス通学……?
漁師のおじちゃん、おばちゃんたちは、どうしているだろう? 海はまだまだ寒いよな……ワカメ漁、今年は調子いいんだろうか?
あ、出かけるまでに、インゲンの種を播くのと、長ネギの植え替えをしておかなくちゃ……。
* * *
ぼんやりしながら、頭の中はグルグルぐるぐる……。虫やカエルもは、穴の中で何を考えているんだろ…?
アーノルド・ロベールの『がまくんとかえるくん』をふと思い出しました。好きな本です。
雨、散歩、本
タイトルにひかれて、手に取った一冊、『春を恨んだりしない 震災をめぐって考えたこと』池澤夏樹著(中央公論社)。
震災後、池澤さんが感じたこと、考えたこと、東北に行ったときのこと、原発のこと、いろいろが書かれてある。読んでいて、すこし重い気持ちになったり、ハッとするようなひとことに出会ってドキンとしたり、この2年で出会った東北のたくさんの友や海やがれきの町を思い出して、読み終わったときは大きなため息をついた。
この本には、モノクロの写真もたくさん入っている。東北沿岸部の被災後の風景…というか、空気が写っていたが、これが池澤さんのことばと合って、とてもよかった。
郵便局まで用があって、ふだんだったら車で行ってしまうところを、今日は雨の中、ブラブラと歩いて行った。本の余韻を味わいたかったからかもしれない。
ちょっと歩けば、ほんとうにいろんなものが見えてくる。水たまり、緑、花びら、土のにおい、春。
感じるってことは、生きているってこと。自分も、地球も。
「たまたま生き残っ我々」、その責務、「東北の人々と共に踊る日のためにできることのすべてをした上で、その日を待ちながら、一人ででも踊る」池澤さんのことばが、腹の底に響く。
今日
午前中、東北の友人からメールがあった。
「昨日で職場、やめました」
ドキッ……やっぱり……。いろいろあって悩んでいる様子をいつも聞いていたからなあ、とうとう決断したか……。職場の状況、友人の悩んでいる姿、いろいろ考えて、すぐに返信できなかった。
やっと返したのが、
「大変だったのはわかってたけど……だいじょうぶ? 今度会ったら、ゆっくり話しよう」
ため息が続いた。被災して仮設暮らし、次の仕事は? ……わたしに何ができる?
それから間もなく、返事がきた。
「今日は何月何日かな?」
(えっ、仕事を辞めて、日にちもわかんないくらい落ち込んでる…?)
カレンダーを慌てて見て、返信しようと…… あ……!!!!!?
4月1日 _____ April fool 's day
ヤラレタ…… 思わず大笑い。と共に、ドーッと脱力。
いやあ、東北人のユーモアとたくましさに、たまげたべー。「自分の境遇を笑って話せるようになってきたら、物事をだいぶ客観的に見られるようになってきた証拠」なんて言われることがあるけれど、ほんとにもう、すごい!!
まだまだわたしは、かなわんなあ(苦笑です)。
畑仕事=草取り?=creative
一昨年くらいから、前に増してあちこち出かけることが多くなったため、畑はそっちのけのかんじ……でもないのだけれど、案の定、草ボウボウ。
やりだせば止まらない性格なので(=やらないときはやらない、という横着でもある)、ここ数日は夕方畑に出て、せっせと草取りをしています。
農家の娘だし、なんといったって小さい頃から田んぼも畑も手伝ってきたし、しかも最初の勤め先は農業関係の出版社だったし……畑仕事(やさいづくり)なんてお手の物! と思っていたのが、ここにきて深い挫折の念というか、「やっぱり、そんな簡単なものじゃないぞ、これは」という謙虚な気持ちに。
子どもでも人でも、伸ばそうとするときに「誉める」と「注意や気づかせる」のタイミングがあるように、野菜だって、栄養のくれどきや間引きやら剪定やら…あるんですよね。その前に、大事なだいじな土壌づくりもあるし。まだそれがいまいちピンとこない。
ただ言われるままに手伝っていたのと、自分でやるのとでは、やっぱり全然ちがうんだと、深く深く納得。
ここは本腰を入れて……といきたいところだけれど、この春以降もまだまだ家を留守にすることが多くなりそうで、こまめに手をかけての野菜づくりは難しそう。播いておいて育つ、畑の肥料になるくらいの気持ちで、今から大豆や大麦でも播いておこうかと思案中。
……草むしりしている時間は、目の前の仕事に集中しながらも、ぼんやり様々なことを「あーでもない、こーでもない」と考えて、実はなかなか良い時間。テーブルの前に座っていると、PCに向かうだけで、わたしの場合、意外と想像的思考回路は働かせていないような。
思考のrefreshのために、いつも草むしり……まあ、ぜいたくといえば贅沢か。でも、畑に出る度、近所に響くようなくしゃみと鼻水。なんだか、refreshなんだか朦朧なんだか、わからないこの季節です。