2013-04-02

雨、散歩、本


タイトルにひかれて、手に取った一冊、『春を恨んだりしない 震災をめぐって考えたこと』池澤夏樹著(中央公論社)。

震災後、池澤さんが感じたこと、考えたこと、東北に行ったときのこと、原発のこと、いろいろが書かれてある。読んでいて、すこし重い気持ちになったり、ハッとするようなひとことに出会ってドキンとしたり、この2年で出会った東北のたくさんの友や海やがれきの町を思い出して、読み終わったときは大きなため息をついた。

この本には、モノクロの写真もたくさん入っている。東北沿岸部の被災後の風景…というか、空気が写っていたが、これが池澤さんのことばと合って、とてもよかった。

 

郵便局まで用があって、ふだんだったら車で行ってしまうところを、今日は雨の中、ブラブラと歩いて行った。本の余韻を味わいたかったからかもしれない。

ちょっと歩けば、ほんとうにいろんなものが見えてくる。水たまり、緑、花びら、土のにおい、春。

感じるってことは、生きているってこと。自分も、地球も。

「たまたま生き残っ我々」、その責務、「東北の人々と共に踊る日のためにできることのすべてをした上で、その日を待ちながら、一人ででも踊る」池澤さんのことばが、腹の底に響く。

 

 
 
雨の中を歩きながら、八島太郎の絵本『あまがさ』のモモを思い出す。
どっちもすばらしい本。
本ってやっぱりいい。



2013-04-01

今日


午前中、東北の友人からメールがあった。

「昨日で職場、やめました」

ドキッ……やっぱり……。いろいろあって悩んでいる様子をいつも聞いていたからなあ、とうとう決断したか……。職場の状況、友人の悩んでいる姿、いろいろ考えて、すぐに返信できなかった。

 

やっと返したのが、

「大変だったのはわかってたけど……だいじょうぶ? 今度会ったら、ゆっくり話しよう」

ため息が続いた。被災して仮設暮らし、次の仕事は? ……わたしに何ができる?

 

それから間もなく、返事がきた。

「今日は何月何日かな?」

(えっ、仕事を辞めて、日にちもわかんないくらい落ち込んでる…?)

カレンダーを慌てて見て、返信しようと…… あ……!!!!!?

4月1日 _____  April fool 's day

ヤラレタ…… 思わず大笑い。と共に、ドーッと脱力。

いやあ、東北人のユーモアとたくましさに、たまげたべー。「自分の境遇を笑って話せるようになってきたら、物事をだいぶ客観的に見られるようになってきた証拠」なんて言われることがあるけれど、ほんとにもう、すごい!!

まだまだわたしは、かなわんなあ(苦笑です)。

 


2013-03-31

畑仕事=草取り?=creative


一昨年くらいから、前に増してあちこち出かけることが多くなったため、畑はそっちのけのかんじ……でもないのだけれど、案の定、草ボウボウ。

やりだせば止まらない性格なので(=やらないときはやらない、という横着でもある)、ここ数日は夕方畑に出て、せっせと草取りをしています。

農家の娘だし、なんといったって小さい頃から田んぼも畑も手伝ってきたし、しかも最初の勤め先は農業関係の出版社だったし……畑仕事(やさいづくり)なんてお手の物! と思っていたのが、ここにきて深い挫折の念というか、「やっぱり、そんな簡単なものじゃないぞ、これは」という謙虚な気持ちに。

子どもでも人でも、伸ばそうとするときに「誉める」と「注意や気づかせる」のタイミングがあるように、野菜だって、栄養のくれどきや間引きやら剪定やら…あるんですよね。その前に、大事なだいじな土壌づくりもあるし。まだそれがいまいちピンとこない。

ただ言われるままに手伝っていたのと、自分でやるのとでは、やっぱり全然ちがうんだと、深く深く納得。

ここは本腰を入れて……といきたいところだけれど、この春以降もまだまだ家を留守にすることが多くなりそうで、こまめに手をかけての野菜づくりは難しそう。播いておいて育つ、畑の肥料になるくらいの気持ちで、今から大豆や大麦でも播いておこうかと思案中。

……草むしりしている時間は、目の前の仕事に集中しながらも、ぼんやり様々なことを「あーでもない、こーでもない」と考えて、実はなかなか良い時間。テーブルの前に座っていると、PCに向かうだけで、わたしの場合、意外と想像的思考回路は働かせていないような。

思考のrefreshのために、いつも草むしり……まあ、ぜいたくといえば贅沢か。でも、畑に出る度、近所に響くようなくしゃみと鼻水。なんだか、refreshなんだか朦朧なんだか、わからないこの季節です。


2013-03-14

3.11を大槌で…


9日から釜石に来ています。 3.11は、震災後、釜石・大槌エリアでうまれた子どもたちのバイオリン教室「くらぶ海音」のお手伝いで、大槌町の吉祥寺さんや大槌役場、赤浜、吉里吉里海岸をめぐりました。震災から2年を迎えるこの日、これらの各地(各場所)でおこなわれた慰霊の式典に、「海音」の子どもさんたちや、神戸(兵庫県立芸術文化センター所属)から見えたスーパーキッズ・オーケストラの子どもさんたちが参加、慰霊の気持ちをこめた演奏をしたのです。(上の写真は大槌役場前。下の写真は、大槌町役場前で演奏する「くらぶ海音」の子どもさんたち)
2:46は、吉里吉里海岸で迎えました。 当日は晴れたものの、強風+底冷えの一日でした。でも……各会場にはたくさんの方々が参列し、静かに祈りを捧げていました。
「あの日」、このあたりは曇りがちで、夜には雪もちらついたそうです。(寒空の中、避難をしていた人たち、水をかぶった人たちのことを思えば、今日の寒さなんて…)でも、やっぱり寒かった。だから余計に「あの日」の多くの人たちことが思われて、なんとも言えない気持ちになりました。 そんな思いを、子どもさんたちのバイオリンの音色が、そっと包んでくれた気がします。(下は、吉祥寺さんでの演奏・スーパーキッズたち)



2013-02-25

絵本完成『つなみてんでんこ はしれ、上へ!』


足掛け3年、実際には1年10ヶ月、待望の、東日本大震災時の釜石の子どもたちのことを描いた絵本ができました!   岩手県の同市に住むいとこ家族が被災したことから、足を運ぶようになった釜石。いろいろふしぎなご縁+どうしても本にしたい、という強い希望(半分執念)があって、釜石東中学校と鵜住居小学校の子どもたちとずっと交流しながら仕上げました。  釜石に入って間もない頃(震災から約2ヶ月後)は、物事を見る立場が「外から見る目(視点)」だったと自分でも思いますが、毎月のように通い、知り合いもたくさんできて、お仕事も手伝ったりするようになってからは(半分釜石人?)、視軸の角度がかなり変わったように自覚しています。そういうところが、絵本に出ていたらいいな……。これは、読者のみなさんのご判断ですけれど。  下の写真は色校時のゲラ。紆余曲折、いろんなことを乗り越えての本づくりだったので、今でもゲラも愛おしくて…。いつも仕事をするテーブルのそばにおいてあります。(仕事机は物で埋まってジャングルになっているため、いつもご飯を食べるテーブルで仕事をしてます。しかしそのテーブルの上も半ジャングル…整頓できない性格です、トホホ)
   *    *    *  タイトルですが、ずっと前、初期には「津波からいのちを守りきった子どもたち…」とか「東日本大震災 釜石の子どもたちの生きる力」など考えたときもありました。でもなんとも長くて説明っぽくて、しっくりこないなあ…と悶々。考えに考え、行き着いたのは「あの子たちはみんな、とにかく高いところ目指して走りに走って、いのちを守った。今回の震災(津波被害)は、とにかく上へ、走ってにげることがだいじだったんだ」とハタと気づき、このタイトルに。「これだ!」と確信してからは、もう迷いはなし。ただひたすら前進のみ。  差し込みの「てんでんこ新聞」は、ポプラ社の編集のMさんが、「こんなのつけたらいいかも!」とアイディアをくださいました。解説ページがとれなくてどうしようと悩んでいたので、niceアイディアに「了解!」と二つ返事。伊藤秀男先生の挿絵もダイナミック、かつ繊細・大迫力です…どうぞ、細かなところまでご覧ください。見る度に新しい発見がありますので。    *    *    *  絵本では、いのちを守りきった子どもたち(光の部分)を描いていますが、現場・現地では、光の影につらくかなしいこともたくさんあります。その両方を描くことがだいじではないかと、わたしは考えています。今回、描ききらなかったさまざまなことを、またかならず別な形で表現していくつもりです。



2013-02-14

今ごろですが…ほんとは今がお正月


あっという間に2月半ば。えっ、バレンタインデー?
それはさておき、旧暦のお正月、本来の年初めはつい先日の9日。
改めまして、本年もよろしくお願いいたします。
   ・・・・・・・・・・
このごろ、以前より釜石に来ることが多くなり、
行ったり来たりもめんどうくさく、それならいっそのこと、
今年は釜石に長逗留……などと考えています。
2月も(現在の暦で)7日から釜石に来ていて、あっという間に1週間。
お手伝いをしている宿・宝来館では、この間に黒森神楽が舞われ、
たくさんのお客様がいらして、大興奮。
一昨日は雪も降り、海辺も久々に雪景色。
今週末は、釜石市内で「おひな様づくりー絵付け教室」のお手伝い。
…実はこれは、わたしの住んでいる町・埼玉県鴻巣市の人形職人さんを
講師に招いての、お楽しみイベント。
楽しいのと忙しいので、毎日が飛ぶように過ぎていきます。
    ・・・・・・・・・ 
そんなあれこれを、これから(今年)はもう少しマメに、
記録に残していこうと思います。
お時間があったら、ちょっとのぞいてみていただければうれしいです。

p.s.写真は、鴻巣の人形頭師、的場健一さんの作品。お気に入りの1枚です。



2012-07-17

連続ドラマ…


ちょっと気になっていたNHK「はつ恋」。
大筋はコマーシャルで、そして
たまたま最終回だけ、今。

TVのドラマを通して、実は観ている多くの人が、
20年、30年前、まだ初々しいころの自分と引き合わせて
観ていたのでは……(女性はとくに…)
そんなにドラマチックじゃなくても、
胸にしまっていた記憶、たぐりよせながら…。

誰にだってあるよね、ほろ苦い記憶、
ツキンと胸を刺されるような想い出。
このごろ、学生時代に聞いていた音楽を
youtubeで探して、繰り返し聞いたりして。

想い出を糧には生きられない。
でもせめて、ときには気持ちだけでもあの頃に…と、
妙に独り言つ、この夏です…。
(鏡、見ちゃだめかもね…)




2012-07-17

カラスウリの白い…


夕暮れ時、みつけたカラスウリの花。
なんで日中でなく、夕方に咲くのかな。
クモの糸のような、網のような、
ちょっと怪しげな形。でも真っ白で清楚…。

静岡(遠州の森町)では、お盆は7月。
昨日・一昨日の夕方は、各家の前で
送り盆のかがり火が焚かれ。
カラスウリの花の純白、送り火の臙脂色、
なぜか目に焼き付く。

梅雨があけ、本格的な夏の到来。




2012-07-16

good bye Nuclear


昨日から家の事情で再び静岡へ。

昨晩、広島の知人から電話があって、
「宇根さんを偲ぶ会、無事に終わったよ」と。
今年2月に他界した宇根利枝さん。
50年以上、原爆の慰霊碑に、清水をお供え
し続けてきたおばあちゃん。

子どもみたいにかわいい表情、
「携帯は持たないの。閻魔様から
〈早う来い〉って電話きたら困るから、アハハ」
いつも、ユーモアたっぷりのことば。
人に惜しげなく与える人。
いつかは、帰りがけに
「埼玉まで帰る新幹線の中で、食べんさい」と、
パックに入ったおにぎり5個、お稲荷さん5個を
半ば強引に手渡されたことも。
「一人じゃ食べきらないよー!」
と言っても、
「道中長いし、何があるかわからんけえ。
持っていきんさい」
みんなで笑った懐かしいあの日。

誰が何と言おうと、信念を曲げず、
原爆献水活動を貫き通した宇根さん。
子どもを、人を、自然を愛し続けたおばあちゃん。
今の福島の様子を見たら、なんて言うだろう。

いのちと健康あっての人生、生活、社会。
でも、わたし達も生活を、
腹をくくって見直さねばならないと思う。
「イヤ、ダメ」だけでなく、その先のVision
……私は、見えているか、自問自答。

今日、代々木公園には行けないけれど、
「さよなら原発」、気持ちはいっしょです。

今年初めて咲いた、庭の「はるかのひまわり」。
昨夏、福島・いわきで見たたくさんのひまわり、
あの時の複雑な気持ちが、忘れられない。





2012-07-13

天井に…けもの屋敷


きっと、ずっと留守にしていたせいかも。
でも……どこから来たんだ?

昨晩、ふと天井を見上げて、
ギョギョッ
「ぎゃーーーーーーーーーっ!」
とまではいかなかったけれど、
ちょっとビビった。

わが家に、新しい住人…いや住獣。
コウモリ。
夫曰く
「虫とか食べてくれるから、いいじゃん」
ウム…微妙な納得感。
「こんなチャンスは滅多にないぞ。
写真、撮っていて」
ハア……

でも、近寄ってよく見ると、
意外にかわいい。
体長(縮こまっている寸法)約50mm。
フラッシュをバシバシたいても、
微動だにせず。

朝には、3m南へ移動していた。
飛んだのかな? 歩いたのかな(天井歩き)?
新しい住人の名前を
コウモリの「モリちゃん」と名付けよう。
あれ、この名前、物書きの友人にいた……
ま、売れっ子だから、あやかって。
〈モリちゃんのブログ
 http://blogs.yahoo.co.jp/osakana920〉


明朝がまた楽しみ。
さて、何m、どこへ移動するかな?
わが家はwonderful house…
…じゃなくて、wildだぜ〜。